ゲーム

 シャーロックホームズ、エルキュールポアロ、インディージョーンズ、何れも創作の物語だが、彼らに共通していることが一つある。それは彼らがゲームとして難問に挑み、謎解きを楽しんでいることである。無論、小説や映画の中の話だが。

 一方、現実の世界を生きている我々は、さまざまな課題や時には難問に直面する。万一そのような事態に直面したら、腹を据えて、ゲームとして取り組んだらいい。

 考えてみれば、人生というものは自分が主役のドラマであり、次々に起こる課題や難問を解決してゆくゲームなのだ。無論、ここで言うゲームは遊びのゲームではなく、知力を尽くした真剣勝負という意味である。

心構え

 ゲームに挑む心構えとして最も重要なことは、どんな難問でも必ず解決できるという信念である。アタックルートは未だ発見できていないが必ずどこかにある、そう信じることが重要だ。

 そもそも「成功する秘訣は何か」という問いの答えは、「成功するまで諦めない」ことなのだ。実践することは容易ではないが、法則は単純である意味冷徹さえある。

 必ず解決できるという信念を持った人間には、課題を解決するためのヒントが向こうからやってくるものだ。あたかも信念がヒントを引き寄せるかのように。

アタックルート

 五里霧中の状態では登山ができないように、混沌の中に身を置いた状態で、課題を解決することは難しい。何故なら課題の全体像を把握できなければ、アタックルートが分からないからだ。

 課題解決をジグソーパズルに譬えてみよう。まず人生におけるジグソーパズルの場合、そこにどんな絵が隠されているかは分かっていない。この点ではミステリー小説と同じである。ミッシングピースを一つずつ見つけてゆくことによって、課題の全体像は少しずつ姿を見せるようになる。ちょうど山で霧が晴れてゆくかのように。

 課題解決をゲームと捉えるという意味は、楽しみながら謎解きをすることと同義である。ゲームと捉えることで事態を客観視でき、アタックルートの発見が容易になるからだ。

一人二役

 ミステリー小説に登場する名探偵にとって、事件は自分の身に起こったものではない。探偵という役割は始めから事件の当事者ではないことがミソである。探偵は事件の外に身をおいて、状況を終始冷静かつ客観的に眺めることができるからこそ、謎解きを楽しむ余裕が生まれるのだ。

 一方人生はそう単純ではないが、構図は同じである。もし人生において難問に直面したなら、ドラマの主人公の他に名探偵役を登場させればいいということだ。つまり自らが一人二役を演じて、名探偵の視点で難問に向かう、そういう立場を作ることが重要である。

 言い方を変えよう。難問に直面している当事者としての自分は、精神的に追い詰められてパニック状態となり、冷静に論理的に考えられないことが多い。一方、当事者の自分とは別のところに視点をおいて事態を客観視できれば、「この課題、些か手ごわそうだ。さて、どうやったら解決できるか、何処から取り組むもうか。」という展開に変えることができる。

 このことをゲームの構図として考えてみる。当事者の自分一人で難問に対峙している状況は、突然起こった難問から強烈なストレスにさらされて追い詰められている構図となっている。これに対して、名探偵役のもう一人の自分を登場させて、難問と当事者の自分が対峙している状況を客観視することができれば、ゲームの構図を変えて、ゲームの主導権を握ることができるというわけだ。

 多くのゲームは全体像が分からないところから始まる。ではその状態で、どうやって難問にアタックしてゆけばいいのだろうか。難問を解くカギは疑問に思うところに隠れている。Why=何故?を問いながら、謎解きをしてゆくことはミステリー小説における名探偵の常道であり、「思考の作法」である。

思考法から処世法へ

 ゲームに挑み難問を解決してゆく、その行動の一つ一つが人生というドラマを紡いでゆく。

 こう考えるとき一つの処世法に到達する。つまり眼の前に道が二つあるとする。困難な道と楽な道の二つだ。この場合、賢明な処世は迷わずに困難な方を選ぶことである。何故なら困難を克服してゆくところに人生の醍醐味があり、その過程でより大きく豊かな収穫が得られるからだ。

 もし楽な道を選んだ場合、その後の人生においてずっと楽な選択肢が用意されるとは限らない。むしろそういう生き方をしていると、人生の後半になって難問に直面した時に、それを乗り越える力を蓄えていないために立ち往生してしまう恐れさえある。

 宮本武蔵の「独行道」に、「神仏を尊み、神仏を頼まず」という言葉がある。自分の力を信じて進めという覚悟を言葉にしたものである。 現代は刀こそ差していないが、課題や難問の一つ一つが真剣勝負であることに変わりはない。情報が溢れている現代の方が処世は遥かに難しいともいえる。だからこそ処世はゲーム心で臨めということなのだ。

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