全体像を描き本質を探る

 如何なるテーマや課題を考える場合にも、現象に関わる情報をもとに、広がりとしての全体像を捉え、深さとしての本質を探ることが重要である。現象と全体像と本質、この三つを分けて考えることが、「座標軸を持つ」に続く「思考の作法」の二つ目の型である。

 情報化社会の現代、テーマや課題について飛び交う情報の大半は「現象」に関わるもの(一次情報)である。これに対して全体像と本質は、一次情報に分析と考察を加えることよって見えてくる姿であり、これを二次情報(付加価値情報)として区別する。

 では一次情報をもとに全体像を描き本質を探るにはどうすればいいか。基本的な手順を書いてみよう。

 言うまでもないことだが、第一は、情報をファクトとそれ以外に区別することである。まず大事なことはファクトを正確に把握することであり、そのためにはフェイク情報はもとより、バイアスのかかった情報を排除しなければならない。

 第二は、全体像という言葉のとおり、ファクト情報を一目で見えるようにすることである。そのための効果的な方法は、ホワイトボードにファクト情報を書き出すか、或いはポストイットを使って貼り付けてゆくことである。

 第三に、ファクト情報を洗い出した段階で次にやるべきことは、書き出した情報を関係づけながら整理することである。何が幹で何が枝か、何が原因で何が結果か、何と何の間に相関関係があるか等々。情報を関係づけながら整理してゆくと、「体系的に整理された一次情報」が出来上がる。

 最近では、電子版のホワイトボードであるマイクロソフトの “Whiteboard” がある。表現をより的確なものに修正したり、関係づけをしたり、体系的に並び替えたりすることがマウス一つでできるので、とても便利なツールである。

 第四に、情報を体系的に整理した後に取り組むべきは、それを俯瞰して「これが物語ることは何か」を考えることである。地震の原因が地下のプレートの活動にあるように、社会で起きる現象は深層で何らかの力が作用した結果として起こると考えるべきである。ここで大事なことは、どんな力が働いてどこに向かって動こうとしているのかを見極めることにある。

 第五に、具体的には、「体系的に整理された一次情報」をじっと眺めて湧き上がる疑問を言葉として書き出し、その論理的な説明を考えてゆくことである。この作業の過程で、「体系的に整理された一次情報」は「分析と考察を加えた二次情報」=全体像と本質へと姿を変えてゆくことになる。

 ここまでくると、「これが物語ることは何か」という問いを説明する「仮説」へと視点がシフトする。飽くまでも仮説であるから、最後のステップはその仮説を検証することである。

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