歴史的大転換点にある世界(2)

 第1部では、現在同時に進行している代表的な8つの危機についてその全体像を把握することを試みた。第2部では、それは何故起きたのか、真相をどう考えるか、事件の本質はどこにあるのかについて考察を加える。

<現代社会の基本構造>

 現代社会の秩序は、図に示すように四階層の構造として捉えることができる。即ち、第1層が普遍的価値体系、第2層が個人的価値観、第3層が国家・社会を構成するシステムや制度(民主主義、資本主義、法体系等)、第4層が国際社会を構成するシステムや制度(国連、為替、貿易等)の四階層である。

 この中で普遍的価値体系は全世界共通だが、個人的価値観は宗教やイデオロギーの違いから主観的で国家毎の多様性がある。しかも資本主義、民主主義、法体系等、国家・社会を構成するシステムや制度(以下、「システム」と省略)の何れもが、未完のシステムである。

 戦後の国際秩序を構成するシステムの多くは、国連がそうであるように、第二次世界大戦(以下、WW2)の教訓を踏まえて整備された。但し現実は、各国の利害や宗教・イデオロギーが異なるため、国際秩序を脅かす重大事件ほど当事国の合意に至ることは基本的に困難で、合意に至ったとしてもその後の各国のお家事情で容易に反故にされてしまう事例が多い。

 最近の事例では、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に対しグテーレス国連事務総長は、国連憲章第2条4項は国際関係において「武力による威嚇または武力の行使」を慎むよう求めており、「ロシアの軍事作戦は国連憲章違反」であると断定している。一方のロシアは加盟国が攻撃を受けた際の個別的・集団的自衛権を定めた憲章51条に従った決定だと反論している。

 その他の事例としては、国連安保理は北朝鮮に対する制裁決議を多数成立させてきたが、北朝鮮はそれを遵守しておらず、ロシアや中国も制裁決議を無視して北朝鮮を支援している。ことほど左様に、国際社会を構成するシステムは脆弱な基盤の上に作られた砂上の楼閣となりがちである。

<国際秩序と覇権>

 第1部で分析を加えた「21世紀の戦争、国際秩序、ドル覇権」に係る危機は、何れもアメリカを中心に起きていて、互いに強い相関性があることから、一体として論じることとする。はじめにこれらの危機は何故起きたのか、時間軸から俯瞰すると注目すべき二つの動向が浮かび上がる。

 第1の動向は、WW2以降の覇権の変遷である。戦後史を振り返ると、アメリカはソ連に対抗する布石とするために中国の経済成長を全面的に支援してきた。しかし現実は、ソ連が崩壊してポスト冷戦期へ移行すると、中国はなりふり構わず軍事大国化を目指し、アメリカに正面から挑戦する存在となった。

 トランプ政権になってアメリカは、幾ら豊かになっても中国は民主主義化しないことを確信し、もはやアメリカの容認限界を超えていると判断した。そしてペンス副大統領の宣戦布告演説を皮切りに、バイデン政権でのワシントン・コンセンサスの改定を経て、アメリカは対中政策を抜本的に転換する意思を世界に表明したのである。

 第2の動向は、戦争の形態の革命的な変化である。1999年に中国の二人の軍人が書いた『超限戦』が中国で発刊されベストセラーになった。2001年には邦訳版が出版されている。これは「非軍事の戦争行動」と「非均衡、非対称の戦法」を特徴とするもので、21世紀の戦争では「あらゆるものが手段となり、あらゆる領域が戦場となる」と主張して世界の耳目を集めた。

 米ソ冷戦期において、ロシアと中国が相次いで核兵器保有国となったため、米ソ(露)、米中間の20世紀の戦争は封印されてきた。ところが国際社会を構成するシステムの一つである通貨、具体的には国際決済ネットワーク(以下、SWIFT)や石油ドル決済システム(以下、PDS)を攻撃手段として使用することで、戦死者を出さずに相手国経済を攻撃する戦争が実行可能となったのだった。

 日本での常識的な思考では、21世紀にアメリカが中国とロシアと同時に戦争をするなどというバカなことをする筈がないと考えるが、アメリカの歴史では「目的達成のためには手段を選ばず、躊躇なく実行した」事例は特別なものではない。むしろアメリカという国の本質に関わるものである。

 達成したい命題が明確で、それを実現しようとする強い意思があり、それを実現する手段が使用可能となれば、シナリオを組み立ててタイミングを見計らって冷徹に実行する。アメリカはこのプロセスに従って21世紀の戦争に踏み切ったと考えられる。

 たとえばルーズベルト大統領がチャーチル首相の要請を受けて、WW2に参戦するために日本を経済封鎖し挑発して真珠湾攻撃に踏み切らせたことは、フーバー大統領が書いた回顧録『裏切られた自由』が明らかにしている。その他にもケネディ大統領の暗殺、9.11同時多発テロ、最近ではノルドストリーム・パイプライン爆破等、政府組織の関与が疑われる事件が、何れも陰謀論という煙幕の中で真相はうやむやのまま歴史に封印されてきた。

 アメリカはWW2においてドイツと日本を潰し、次にソ連邦を解体させたのに続いて、今ロシアと中国を弱体化しようとしている。何故そのような無謀で時代遅れとも思える選択をしたのか。真相として考えられる理由は、長期的かつ相対的にアメリカの力が弱体化しており、これ以上中国の強大化は容認できない臨界点に到達したからではないだろうか。

<アメリカ:民主主義の崩壊>

 中露に対する21世紀の戦争に関して、たとえ命題と意思、手段とシナリオが揃ったとしても、実際にそれを行動に移すためには国内の環境整備が不可欠となる。目的思考で考えれば、まず民主党が政権を奪回して、次にシナリオに従って実行する大統領を選出しなければならない。そのためには2016年の大統領選で勝利したトランプ氏の再選を阻止する必要があり、組織的かつ大規模な不正を行って選挙結果を書き換える必要があったと推察される。

 もしこの仮説が正しければ、シナリオどおりロシアと中国の弱体化に成功したとしても、そのためにアメリカがこれから払う代償は途方もなく大きなものとなるであろう。何故なら20世紀で封印した筈の戦争を蘇らせ、ドル覇権を毀損させ、あろうことかアメリカ社会の基盤である民主主義に回復不能なダメージを与えたからである。恐らくアメリカにとってはそういう代償を払ってでも、このタイミングで両国を弱体化しておくことが不可欠かつ最優先の命題だったということだ。

 この結果、アメリカ民主主義の崩壊と社会の分断は、2024年の大統領選に向けて今後一層激しさを増してゆくに違いない。しかもアメリカ社会を長期に渡って蝕み弱体化させてゆくだろう。これは国内に与えたダメージである。

 国際社会に与えたダメージとして、これからアメリカが直面する課題が幾つかある。第一に、今まで石油取引によって裏打ちされてきたPDSが弱体化し、決済通貨の多様化が進むことが予想される。実質的にはドルペッグ制で変動相場制でもない中国人民元による決済が拡大するとは思えないが、貿易決済手段のドル離れが進むことは間違いない。

 第二に、BRICSの参加国拡大が暗示するように、世界の多極化が徐々に進むことが予想される。そう考える理由は、ノルドストリーム爆破が象徴するようにアメリカのやり方はかなり強引であり、それを忌避する国が徐々に増加して、アメリカ離れが静かに世界に浸透してゆくと思うからだ。

 第三に、アゼルバイジャンとアルメニアの衝突が先ぶれとなり、今後ロシアの影響力低下という遠心力が働いて、ロシアの勢力圏や周辺地域で地域紛争が活発になってゆく恐れがある。実際に10月7日にはイスラエルとパレスチナが第四次中東戦争から50年というタイミングで戦闘状態に突入した。ウクライナ戦争によって世界秩序に大きなヒビが入ったために、今後世界が不安定化してゆくことが避けられない。

<中国:一党独裁の限界>

 中国不動産バブルの崩壊と経済の急減速は、アメリカの制裁というよりも習近平政権のオウンゴールに帰する処が大きい。ゼロコロナ政策の失敗と拙速での撤回、さらには未来の「金の生る木」に成長した筈の大手IT・ゲーム企業や塾などに対する弾圧が、中国経済に壊滅的な損害を与えたことは明白である。

 経済評論家の朝香豊氏が「習近平が中国経済を崩壊させると言わざるを得ない、これだけの理由」と題した記事の中で、習近平の経済音痴を指摘している。興味深いので以下に要点を紹介する。(参照:現代ビジネス、9/23)

1.習近平政権は言葉だけは立派だが、具体性のない政策を打つことが多い

2.習近平は欧米流の消費文化を堕落と考え、西側諸国の財政政策を採用しない

3.経済を拡大するには、筋肉質なところも贅肉的なところも必要なのだが、贅肉は削ぎ落して、筋肉質なものだけで経済を回せばいいと本気で考えている

4.大規模なインフラ整備が中国の経済成長をもたらしたことは事実だが、膨大なインフラが建設途中で放棄されているというのに、インフラをもっと作れと号令をかけている

 中国経済が急激に失速した本質的原因は、インフラ開発依存から国内消費中心へ、国営企業中心から民営企業中心へ、共産党政権維持ではなく国民の豊かさ追求へと、経済成長に応じて経済政策を転換すべきだったにも拘わらず、欧米流のアプローチを拒否したことにある。

 拒否した結果、最悪のケースとして、中国はこれから不動産バブル崩壊の深刻化→金融危機の勃発→経済危機へ発展→共産党の正統性を巡る動乱へと進む可能性がある。5%を超える経済成長が共産党政権の正統性の条件であるならば、「中所得国の罠」を克服することがまず必達の課題であり、そのためには経済政策を転換する必要があるのだが、一党独裁であるが故にそれができない。中国は経済大国となったのだが、一党独裁を最優先とする限り、真に豊かな大国にはなり得ないという矛盾に直面している。

<EU:国家連合の限界>

 そもそもEUは個別の国単位ではアメリカに太刀打ちできないために、大同団結して誕生した歴史を持つ。それがウクライナ戦争という有事が起きて、EUとしての力を発揮できず、アメリカ依存を強める他なかった。21世紀の戦争も、ロシア・中国とのデカップリングも、EUにとっては想定外の事件だったということなのだろう。

 EUはソ連邦が崩壊した直後に設立されたが、「アメリカ1強の時代」から「米中新冷戦の時代」へのパラダイムシフトに柔軟に対応できなかったということだ。EU設立時⇔現在を対比すれば、「ポスト冷戦の始まり⇔終焉」、言い方を変えれば「平和の始まり⇔有事の始まり」という程に、国際情勢は激変した。一方この間にEUは拡大しNATOは休眠状態となっていた。

 EU創設時の前提が一変して、ウクライナ有事下の現在、西欧vs東欧・南欧でインフレ対処における国力の差や、急増する移民・難民に対する立場の違いが鮮明になっている。

 EUでは現在、イタリアの金利急騰に注目が集まっているという。その理由は、メローニ首相が率いる右派連立政権が、2024年度予算案で、2024年度の財政赤字(GDP比)を3.7%→4.3%へ引き上げたことにある。これは欧州が加盟国に示した財政赤字の抑制に関する「GDPを3%以内とする」規律を、イタリア政府は公然と無視したことになる。

 実はこれには歴史的な背景がある。コロナ・パンデミック直後にイタリアの金融不安が顕在化したことがあった。このときEUと欧州中央銀行(ECB)は、「大きすぎて潰せず、救済できない」イタリアの国債を他国より優先して購入して長期金利の金利高騰を防いで、イタリアの危機を防止したのである。

 このように、EUが課した財政規律をイタリアが無視したことによって、EUとイタリアの間に亀裂が生じることが予測される。EU第3位の経済規模を有するイタリアの財政問題はEU内の不協和音拡大の原因になりかねず、アメリカ発の金融危機を不安定化させる懸念が高まっている。(参照:ビジネス・インサイダー、土田陽介、10/5)

 果たしてEUというシステムは、国際秩序を巡る危機が深まっている現在でも、最強・最適化なのかという問いに向き合い、国際情勢の現実を踏まえて枠組みを修正する必要があるように思えるのだが。

<金融危機:資本主義の限界>

 リーマンショックとパンデミックに対処するために主要国が異次元の金融緩和政策をとった結果、過剰流動性が起きて余剰マネーが世界を駆け巡り、不動産を中心にバブルを膨らませた。その渦中でウクライナ戦争が起きてエネルギーや食糧価格が上昇し、世界でインフレが加速した。

 アメリカは2022年3月にそれまで継続してきたゼロ金利政策と決別して0.25%の利上げを決定し、以降2023年7月までに5.25~5.50%へ矢継ぎ早に政策金利を引き上げてきた。そしてアメリカの金融政策の転換は国内のインフレを抑制すると同時に、ドル高をもたらした。基軸通貨ドルが高くなれば、世界から投資マネーをアメリカに還流させることになり、マネーの急激な移動自体が、世界金融危機を誘発させる引き金となる。

 これは意図した結果ではないのかもしれないが、「ドルの兵器化」によってドル覇権体制が揺らぎ始めたタイミングで起きている。もしかしたらドル高政策もまた「ドルの兵器化」の一環であるのかもしれない。

 第1部で書いたように、今後長期金利がさらに上昇する展開になると、投資家が債券の見切り売りに転じて1987年に世界的株価大暴落を起こしたブラックマンデーが再来する恐れがある。現実に、ロイターは「世界で債券売りが広がる」と題した記事(10月5日)で次のように書いている。「米30年債利回りが2007年以降初めて5%を突破した。米10年債利回りは一時4.88%を付けた。」と。

〔注〕中央銀行が制御するのは「政策金利」で、金融機関どうしが資金をやり取りする際の短期金利であるのに対して、「長期金利」は市場取引で決まる長期国債(10年以上)の金利をいう。

 ロイターが報じた米10年債の利回り高騰は、2022年10月に記録した4.33%の壁をあっさりと突き抜けるものであり、過去の教訓をもとに考えれば、長期金利の上昇が債券の暴落を誘発して世界金融危機を起こす危険性が高まっていることになる。

 歴史を振り返れば、世界経済はバブルとバブル崩壊を繰り返し、しかも繰り返すたびに規模を拡大させてきた。端的に言えば、バブルが拡大する原因は、政府・中央銀行による金融緩和(政府が国債を大規模に発行し、中央銀行が買い入れる)にあり、バブル崩壊の引き金となるのは金融引き締め(中央銀行が政策金利を引き上げる)にある。

 しかも中央銀行はパンデミックで持てるカードを使い果たしているため、次の危機が起きても、従来のように強力な対策を打てないリスクが指摘されている。これはバブル依存の経済成長が限界に近づいている証でもある。

 先進国において、少子高齢化が進み経済成長が鈍化する一方で、社会保障費や危機対処など歳出は増大一途にある。アメリカを例外として、G7の多くの国は力強い経済成長を実現できないまま財政赤字の増大に直面している。バブル頼みではない堅実な経済成長のシナリオを新たに開発する時を迎えている。

<人類が直面する危機:臨界点に向かう技術革新>

 技術革新(以下、TI)は人類社会が発展するための原動力である。しかもコンピュータ技術が指数関数的な性能向上を遂げており、次々に生み出されるTIはより破壊的に、かつより急激になっている。さらにTIは例外なく軍民両用(デュアル・ユース・テクノロジー)であり、生活を便利にかつ豊かにする一方で、安全を脅かす武器にもなる。

 このようにTIが諸刃の刃であるため、新しいテクノロジーが登場するたびに人類はそれを統制するガバナンスを確立しなければならない宿命を抱えている。しかし現実は、それを悪用しようとする勢力の登場に対策が追いついていない。中国、ロシア、北朝鮮など政府機関が関与するサイバー攻撃は破壊力を増しており、振込詐欺は日々巧妙になり被害が急増している現実がそれを如実に物語っている。

 一般論として言えば、攻撃する方が攻撃される方よりも常に一歩先行していて、この構図はサイバーテロ組織⇔政府機関でも変わらない。幸いにして核兵器には、民間人が容易にアクセスできない頑強な障壁があるので、テロリストが核兵器を奪うという事態は防止されているが、核兵器はむしろ別格と考えるべきだろう。AIやバイオの場合、悪用者のアクセスに対する障壁が極めて低くなる恐れがある。

 バブルとバブル崩壊が経済面で世界を変えてきたように、TIは産業面で社会を変革してきた。しかもTIの進化は破壊力とアクセス容易性において核兵器を上回るレベルに到達しようとしている。言い換えれば、シンギュラリティの到来と同時に、TIは人類が統制できる臨界点に到達しようとしているのだ。

 パンデミックは致死性が高くなかったことが不幸中の幸いだった。今回のパンデミックが人類に警告したことは、近未来に致死性の高いウィルスがバイオテロとして使われる事態に備えなければならないということだ。従来と同様に事件が起きてから対処行動を起動するのであれば、感染の発生から極めて短い期間で人口分のワクチンや治療薬を、しかも全て国産品を開発し量産できる技術・設備・体制を整備しておく必要がある。

 これはAIを含む全てのTIにおいて共通の命題となるであろう。残念ながら我々はそういう時代に生きているのであり、これは「兵器化」されるTIの進化との戦いなのだと覚悟しなければならない。視点を変えれば、事件が起きてから対策を講じる対症療法的なアプローチの限界に我々は直面しつつあるのかもしれない。

まとめ

 以上、現在進行中の代表的な危機について、第1部ではその全体像を把握することに努め、第2部では、危機が顕在化した原因、危機の真相と本質について考察を加えてきた。

 以上のように俯瞰してみると、何れの危機にも共通する構図が二つあることが浮かび上がってくる。その一つは戦後78年が経過して、国際秩序、経済と金融、人口動態などの分野で、パラダイムシフトという表現が的確であるように情勢が激変していることだ。しかも国家・社会や国際社会を構成するシステムの多くが未完であって、前提としたモデルが陳腐化して制度疲労を起こしていることだ。

 もう一つは、進化をもたらしている原動力であるTIがシンギュラリティ(技術的特異点)に近づいていることにある。例えばウクライナ戦争は形態は20世紀であるものの、使用されている兵器はミサイルやドローンに限らず、人工衛星やサイバーを含めて21世紀の最新兵器である。また経済を動かすマネーの運用は、世界最高性能のコンピュータとAI搭載の最新のプログラムで制御されている。何れのケースでもAI搭載のコンピュータの能力が人間の知能を超えるレベルに到達しつつある。

 生物の進化において環境の変化に必死で適応する種が生き延びるように、人間社会の進化は人類の宿命と達観する他ないのだが、人類を脅かしている危機の正体は、突き詰めて考えればTIであり、TIの変化のスピードであると考えることができる。しかもそのTIは軍民両用であり、諸刃の刃である。その進化のスピードと人類の競争が激化しており、対応を誤れば人類に壊滅的な影響を及ぼすことになるのだ。

 第3部では、ここまでの認識に立って、日本の役割、使命、能力について考えてみたい。

-第2部終わり-

歴史的大転換点にある世界(1)

 世界は現在歴史的な大転換点に立っている。本記事ではこのテーマを取り上げて三部作で書く。第1部では何故そう考えるのか、現在進行中の代表的な大事件を取り上げて、空間軸と時間軸からその全体像を俯瞰してみたい。第2部では、何故それが起きたのか、その真相と本質について考察を加える。

 そして第3部では、ではそのような世界情勢において日本が果たすべき役割は何か、そのために日本はどう変わるべきかについて考えてみたい。ここでは現在を、明治維新とWW2敗戦に次ぐ第三の転換点と捉えて、歴史を踏まえて日本はどう変わるべきかについて考察を加える。

 途方もなく大きなテーマであり、細部に眼を奪われることなく、大きく俯瞰することを心掛けて、飽くまでも市井の個人の仮説として書くこととする。

はじめに

 2020年初頭にコロナ・パンデミックが発生し、2022年2月にはロシアがウクライナに軍事侵攻した。この二つの事件によって国際情勢は一変した。何よりもまず戦後確立されたと世界が信じてきた国際秩序が崩壊した。さらに事件の当事国に留まらず、世界各国の経済が急速に不安定化し悪化した。一言で言えば世界が一気に有事モードとなったのだった。

 それに加えて、長期的にみるとマグニチュード10級(以下、M10級)の危機が進行中である。(参照:https://kobosikosaho.com/world/947

 このように現在世界では複数の危機が同時に起きている。一体何が起きているのか、その正体は何かが分からなければ、どう対処すべきかが分からない。第1部では、まず現在進行中の事態をどのように理解すればよいのか、ここから分析を進めることとする。

 パンデミックは今回が初めてではない。過去にも繰り返し発現している。代表的なものは14世紀の欧州で大流行したペスト(黒死病)、次に第一次世界大戦時のスペイン風邪、そして最近ではSARS(重症急性呼吸器症候群)とMERS(中東呼吸器症候群)などだ。ちなみに日本で発生した代表的な事例には、奈良時代の天然痘と江戸時代のコレラがある。

 今回のコロナ・パンデミックが歴史上特筆すべき事例である理由は、人類史上初めて人為的な要因が絡んでいることだ。発生源を含めてどこまでが人為的だったのか、現時点で明らかになっていないが、今回のパンデミックは映画『インフェルノ』(原作はダン・ブラウン)が描いたバイオテロが近未来に充分現実化し得ることを示すものとなった。

 そして2022年2月にはロシアがウクライナに軍事侵攻した。世界が第二次世界大戦(以下、WW2)をもって終わったと思っていた20世紀型の戦争が再び起きたことは、現代人に衝撃を与えた。我々は今、WW2後に確立されたと思っていた国際秩序が音を立てて崩壊してゆく姿を眺めながら、「WW2の総括は未完だった」現実に茫然としているのである。

第1部:何が起きているのか(全体像を考える)

 前回の記事で「M10級の危機」について書いた。ここではそれを踏まえて現在進行中の代表的な8つの危機を取り上げて、考察を加えたい。

第1は「21世紀の戦争」である。現在アメリカはロシアと中国と二正面の戦争状態にある。

第2は「戦後の国際秩序の崩壊」である。安保理常任理事国のロシアが戦争を始めたことによって戦後に作られた国際秩序が崩壊した。

第3は「ドル覇権の終焉」である。アメリカはロシアに対し「ドルの兵器化」を含む制裁を科したが、これは諸刃の刃であり、ドル覇権の弱体化を自ら促進することになる。

第4は「アメリカ民主主義の崩壊」である。アメリカでは2020年の大統領選のときに一気に顕在化した崩壊が、2024年の大統領選挙に向けて加速している。

第5は「中国経済の崩壊」である。既に不動産バブルの崩壊が進行中であり、もし巨額の不良債権の処理に失敗すれば、金融危機に発展し、経済崩壊を引き起こす可能性が高い。

第6は「EUの停滞」である。EUはソ連邦崩壊直後に創設されたが、ウクライナ戦争後の国際情勢の激変を受けて一気に停滞モードに入った。

第7は「世界金融危機」である。世界経済はバブルとバブル崩壊を繰り返しながら成長してきたが、パンデミックとウクライナ戦争を契機とし、世界は金融危機・大不況発生前夜に陥った。

第8は「技術革新がもたらす危機」である。AIとバイオは核兵器に匹敵する破壊力を持つ可能性が高く、使い方を誤れば人類の存在を脅かす恐れがある。

<21世紀の戦争>

 アメリカは現在、ロシアと中国に対し同時二正面の戦争を戦っている。ロシアに対しては、ウクライナに武器を供与して20世紀型の戦争の長期化でロシアを疲弊させ、同時に「ドルの兵器化」を含む経済制裁を科している。

 中国に対しては、バイデン政権はトランプ前大統領が課した高関税措置を継承しつつ、ワシントン・コンセンサス(前記事参照:https://kobosikosaho.com/daily/928)を改定してデカップリングを進めている。何れも武器を使わず軍を動員しないものの、国家の弱体化を目的とした21世紀の戦争に他ならない。

 20世紀は「戦争の世紀」と呼ばれた。そしてWW2をもって大国どうしが正面切って行う戦争は終わったと、世界中の誰もが信じていた。核兵器大国であるアメリカとロシア、中国が20世紀型の戦争を行うことはもはや起こり得ないのだが、21世紀型の形態に移行したことによって戦争が再発した。グローバル化が進んだ世界では、あらゆる手段を兵器化する戦争は、相手国の経済活動を標的とする破壊力が高い一方で、武器を使う戦争よりも実施に踏み切るハードルが低い。効果的な抑止力は、そのような戦争形態は必ず諸刃の刃となることだ。

 余談になるが、現在中国は科学的根拠を一切無視して日本からの海産物の輸入を一方的に禁止している。台湾有事に繋がるかどうかは別として、これも21世紀型の戦争の一手段、中国流に言えば「超限戦」の一つと捉えることができるのではないか。一方これは諸刃の刃なので、中国国内に相当な被害をもたらしていることが明白である。

<戦後の国際秩序の崩壊>

 安保理常任理事国のロシアがウクライナに軍事侵攻したことによって、安保理は機能不全に陥った。その結果、政治・外交面でのG7の役割が重要になり、軍事面では休眠状態だったNATOがアクティブモードとなった。NATOは2023年にフィンランドの加盟が認められ31ヵ国に拡大し、さらに現在スウェーデンが承認待ちとなっている。ロシアはNATOの東方拡大を何よりも嫌っていた筈だが、ウクライナ軍事侵攻によってフィンランド、スウェーデンの加盟を招いたことは歴史的かつ致命的な大失敗だったと言えよう。

 ウクライナ軍事侵攻を契機として、中露が中核を占めるBRICSが拡大し、G20の活動が活発化している。従来BRICSは5ヵ国だったが、中露の働きかけの結果、2024年からアルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦が参加し11ヵ国体制に拡大することが決まった。ウクライナ戦争を契機に国際安全保障の枠組みが多様化し、多極化している。

 WW2以降の国際秩序はアメリカを軸に変遷してきた。対立の構図の変遷を俯瞰すると、図のように表現できるだろう。

 WW2米ソ冷戦ポスト冷戦→米中新冷戦
対立の構図英米ソvs独日米国vsソ連米国一強→米国vs中国
戦争の狙い独日潰しソ連崩壊ロシアと中国の弱体化
<ドル覇権>

 1971年にニクソン大統領はドルの金兌換停止を宣言した。これはベトナム戦争による財政悪化の解決策として、大統領が議会に諮らずに発動した新経済政策だった。その後為替相場は変動相場制に移行し、大幅な円高・ドル安となり日本経済は大きな打撃を受けた。

 1973年には第一次オイルショックが発生し、世界的に原油価格が高騰した。財政赤字とドル防衛という二つの危機に直面したニクソン大統領とキッシンジャー国務長官は、1974年にサウジアラビアとの間で、ドル建て決済で原油を安定的に供給する代わりに安全保障を提供する協定(ワシントン・リヤド密約)を交わした。こうして原油の決済通貨となったドルが基軸通貨の地位を保持することに成功した。これをペトロ・ダラー・システム(以下、PDS)と呼ぶ。

 そして2022年にウクライナへ軍事侵攻したロシアに対する制裁として、アメリカは国際決済ネットワーク(SWIFT)からロシアの主要な金融機関を排除した。基軸通貨ドルを「兵器化」したのだが、これは「諸刃の刃」であり、今後決済通貨のドル離れに拍車をかける結果を招くだろう。

<アメリカ民主主義の崩壊>

 2020大統領選で大規模な選挙不正が行われ、さらに2021年1月6日に連邦議事堂への暴徒乱入事件が起きて以来、アメリカの議会制民主主義は崩壊の危機に瀕している。果たして選挙不正はあったのかそれとも陰謀論なのか、連邦議事堂への暴徒乱入事件は偶発的だったのか、それとも政治的に仕組まれた事件だったのか、さらには乱入したのはトランプ支持の過激派だったのかそれとも民主党系の過激派だったのか疑問は多い。但し本記事のテーマではないので、ここでは立ち入らないことにする。

 2024年の大統領選を前にして、バイデン政権はトランプ氏の大統領選出馬を阻止するため、トランプ氏の起訴を連発してきた。一方、今まで司法省やFBI上層部による妨害によって、何度も起訴が見送られてきたバイデン大統領次男のバイデン・ハンター氏がようやく起訴された。さらに共和党のマッカーシー下院議長はバイデン大統領の弾劾に向けた調査を行う委員会の設置を決定した。

 このようにアメリカ政治は泥沼化し、しかもかなり深刻化していると言わざるを得ない。ここには国際社会と同様の、かなり乱暴な権力行使の構図が見え隠れしている。

 ロシア産天然ガスをドイツに供給するノルドストリーム・パイプラインの爆破事件から1年が過ぎて、誰が実行した事件なのかについて報道が再燃した。しかしこの事件の構図は極めて単純である。初めに、当事者であるドイツとロシアは、損失が非常に大きいので犯人ではあり得ない。次に、ウクライナには得るものがないだけでなく、周辺国に悟られずに海底に敷設したパイプラインに爆薬を仕掛け、後日遠隔操作で爆破を敢行する能力があるとは思えない。

 従って、動機と能力を併せ持つのはアメリカのみである。政府が関与する事件の場合、歴史上の事例が示すように、最後まで白黒ハッキリすることなく、ウヤムヤのまま闇に葬られることになるだろう。しかしこの事件は、ウクライナへの軍事侵攻と同等に、国際秩序を破壊する行為であることは言うまでもない。

<中国経済の崩壊>

 中国経済の崩壊が始まっている。2020年12月、格付け会社フィッチ・レーティングスは、中国恒大集団が部分的なデフォルトにあると認定した。中国恒大集団は2023年8月17日にニューヨークの裁判所に米連邦破産法の適用を申請した。不動産最大手の碧桂園も資金難によるデフォルト危機に直面している。9月19日には融創中国が米ニューヨークで破産法の適用を申請した。

 このように中国ではGDPの1/4を占める不動産業界のバブル崩壊が深刻化している。ウォールストリートジャーナル紙は9月20日に、「中国の民間巨大開発業者の時代は終わった」とし、「中国人の富の大部分が崩壊する可能性があり、彼らがパニックになるのを防止するにはどうすべきか。それは簡単ではない」と警告する記事を発表した。

 さらに9月20日のフォーブズ日本版は「中国共産党の正統性は5%を優に超える経済成長率にかかっている。2022年の3%という経済成長率は、中国のような規模や発展レベルの経済にとって景気後退の領域に入るものだ。」と分析している。

 ちなみにIMFが発表した中国の経済成長率は、コロナ前の2019年が5.95%、コロナが始まった2020年が2.24%、2021年が8.45%、2022年は2.99%だった。2021年の伸びはゼロコロナ政策による前年度の落ち込みに対する反動と考えられる。2022年の数値はパンデミックから未だ立ち直っていないことを物語る。そして今までに公表された2023年の諸経済指標は何れも惨憺たる値であり、客観的に考えれば2023年はマイナス成長である。

 「中国の統計では3割水増しは常識である」と言われる。中国経済の崩壊は既に始まっているとみるべきだ。ゼロコロナ政策の致命的な失敗を契機に40年に及ぶ経済成長期が終わり、「中所得国の罠」を克服できないまま経済が失速した。急速な少子高齢化と不動産バブルの崩壊が同時に進行していて、1000兆円を優に超える不良債権が残された。習近平国家主席の目論見は破綻し、中国経済のみならず共産党一党支配も崩壊の危機に直面していると見るべきだ。

<EUの停滞>

 EUは1992年に統合され、1999年に統一通貨ユーロが誕生した。EU経済のエンジン役ドイツは強いユーロによって安価な天然ガスをロシアから調達し、中国との関係を密にして経済成長を実現した。それがウクライナ戦争が起きて独露間の蜜月関係は終焉を迎えた。さらにアメリカからの対中デカップリングへの参加要請を受けて、中国との関係も急速に冷え込んだ。こうしてポスト冷戦時代の「強いユーロ、豊富で安価なロシア産エネルギー、巨大市場中国」というドイツの成長モデルが機能しなくなった。

 ロシア特命全権公使、ウズベキスタン・タジキスタン特命全権大使を歴任した元外交官の河東哲夫氏は、現代ビジネスの9月29日の記事で次のように書いている。

 「ユーラシア大陸を巡って米国の力は低下し、中国は停滞、ロシアは衰退し、インドとトルコの力が上昇している。欧州は目下停滞している。2020年1月31日のブレグジットで英国がEUを離脱したために、EUのGDPは15%減少し、EU経済のドイツは再び≪欧州の病人≫となった。ウクライナ戦争で欧州はロシア軍を追い出す力もなく、和平交渉に向けてウクライナを説得する力もない。一方東欧、北欧、バルト三国はロシアの復讐主義の脅威に晒されている。」と。 

 さらに加えれば、ウクライナ戦争を契機としてEUの分断が進んでいる。まず増加一途の移民難民に寛容な西欧加盟国と、拒否する東欧加盟国で意見が対立している。加えてウクライナ戦争後のエネルギー危機に対し、経済力に任せて対処した西欧諸国とそれができない東欧・南欧加盟国の間で軋轢が生じ、一枚岩だったEUの連帯に亀裂が生じている。

<世界金融危機>

 世界の主要国で金融危機がくすぶっている。前述したように、中国の不動産バブル崩壊は巨額の不良債権の処理を誤れば、たちまち金融危機へと発展する危険性が高い。そしてもし金融危機が起きると、経済成長の落ち込みがさらに深刻化し、さらに低成長が常態化するようだと共産党政権の正統性に波及して一党独裁政権が倒壊する危険性が高まる。

 アメリカ発金融危機も懸念される。これには主に二つの原因がある。一つはアメリカがドルを兵器化したことによって決済通貨の多様化が進みドル覇権体制が揺らぎ始めたことだ。他一つは8月2日に米財務省が今後1年間に国債発行を6割増とすると発表したことだ。これはバイデン政権が行った大型財政政策のツケであり、今後の長期に及ぶ構造的な金利上昇要因となる。

 1987年に起きたブラックマンデーは長期金利の急落が引き金になって起きた。今後長期金利がさらに上昇する展開となると、機関投資家が債券の見切り売りに転じてブラックマンデーの再来を招く恐れがあるという。(参照:市岡繁男、JBPRESS、9月2日)

 WW2後の歴史において、バブルとバブル崩壊はスパイラルを描きながら繰り返されてきた。1970年以降世界で発生したバブルは130回に及ぶという。バブル崩壊も、金融資産が増えた近年以降頻繁に起きていて、政府と中央銀行による金融引き締め政策(金利の引き上げ)が誘発している。

 そのメカニズムはこうだ。まず中央銀行が行う金融緩和・低金利と、政府が行う財政出動が市場に豊富な資金を提供する。次にそれが過剰流動性を起こし、世界各地で投機が過熱してバブルを引き起こす。バブルが過熱すると、インフレや投機熱を下げるために中央銀行が一転して金融引き締め(つまり長期金利の引き上げ)を行うので、未来の暴落を警戒する投資家が先を争うように債券や株式、土地を売却し、加熱が一気に覚めてバブルは崩壊する。

 バブル崩壊が起きると銀行破綻の連鎖が起きないように、政府・中央銀行は巨額の資金を投入するのだが、それが次の更に大きなバブルの原因となるという訳だ。しかもサイクルを繰り返す内に、バブルの規模は増大していく。この問題の本質は、いつの間にかバブル依存となった経済成長にある。

 トランプ前大統領は9月8日に行った演説において、次のように発言した。「私たちは恐らく大恐慌に向かっている。こんなことを言ったのは初めてだ。唯一の問題は、それがバイデンの任期中に起きるか、自分の任期中に起きるかだ。」

<技術革新がもたらす危機>

 政治経済における危機とは別に、人類は技術革新(以下、TI)がもたらす危機に直面している。特にAIとバイオは核兵器に次いで人類を脅かすテクノロジーとなる可能性が高い。

 北海道大学の小川和也客員教授は、著書『人類滅亡2つのシナリオ、AIと遺伝子操作が悪用された未来』の中で、「この2つの技術は、我々の根源である知能と生命に直接的に大きな影響を与えるため一層輝かしく、その一方で従来の技術とは異質の脅威、闇を作り出す潜在力も持つ。」と警鐘を鳴らしている。

 人類は宇宙と生物、物質を解明する科学を発展させ、TIを次々に起こしながら社会を発展させてきた。歴史において、農業革命、産業革命、IT革命を生み出し、現代の最新のテクノロジーはAI革命やゲノム革命を起こしつつある。ここで注目すべきことは、TIの歩みは非線形であり、時間の経過とともにより破壊的に、より急激になっていることだ。

 しかしいつの時代でも、またどのテクノロジーもがそうであったように、TIは常に諸刃の刃であった。現在進行中のAI革命とゲノム革命が、従来のTIを凌駕する変化をもたらすことは間違いない。TIがより破壊的になることは、既に核兵器の登場が証明しているように、使い方を誤れば人類の存続をも脅かすということだ。映画『ターミネーター』はAI搭載ロボット、『ダイハード4』はサイバーテロ、『インフェルノ』は人口削減を狙ったウィルステロを主題としており、何れも近未来に起きる危機を予告するものとなっている。

 周知のように、生物は約38億年前に地球上のどこかで発生し、進化と絶滅を繰り返してサピエンスに辿り着いた。生物進化の歴史では大量絶滅が少なくとも5回起きたことが解明されているが、絶滅を起こした原因として、大規模な火山噴火による寒冷化、酸素濃度の激減、それと巨大隕石の衝突が想定されている。

 AIが進化して核戦争の引き金を引く可能性、人工的に作られたウィルスが人工的にばら撒かれて人類を壊滅させる可能性など、史上6回目の大量絶滅は、破壊力を増すTIに対し、それを統制するガバナンスが追いつかないためにもたらされる可能性がある。

 第2部では8つの危機が何故起きているのかについて考察を加える。