コロナ・パンデミックを巡る疑問

コロナの最初の患者が武漢で確認されてから、既に2年半が経過した。5月19日現在で、世界全体の感染者数は5億人 を超え、死者は600万人を超えた。正しく世界レベルのパンデミックとなったが、新たな変異株が発生するたびに感染力は強まる反面、毒性は弱体化してきた。症状だけ見れば、普通の風邪と変わらないところまできた。

率直な私見を述べれば、「コロナは症状として普通の風邪と変わらないところまで弱体化した。従って、今後は政府としては関与しないので、国民においては自己責任で対処していただきたい。」というメッセージを政府が発表して、「コロナ終息」宣言を行えば、日常を取り戻すことができると確信するのだが。

コロナ・パンデミックについては、不問にできない幾つかの疑問点が残ったままである。代表的なものを以下に整理した。以下、(W)は世界レベルの、(J)は日本政府の対策に関わる疑問を示す。

W1:世界レベルの疑問の第一は、コロナウィルスの発生起源は結局どこだったのかという点だ。考えられる可能性として、①自然発生による、②武漢研究所から過失によって漏出した、③人為的にばら撒かれた(つまり、バイオテロ)の三つがある。武漢で最初の患者が確認されてから、中国が世界に感染症発生を公表するまで40日以上の空白があったことも、この間に春節による民族大移動があり、それが世界へ感染を拡大させたことも否定できない事実である。もし自然発生によるものであったなら、中国政府が「意図的に」公表を遅らせる理由はなかったはずだ。従って、疑問の答えは②か③の何れかである。

W2:疑問の第二は、なぜ世界各国で一斉にロックダウン(日本では緊急事態宣言)を行ったのかという点だ。考えられる理由の一つは、未知のウィルス故に各国が厳しい対策を講じたというものだ。あるいは、各国政府がW1でバイオテロを想定して、有事事態対処として厳格な対策を講じたというものだ。

W3:疑問の第三は、バイデン大統領が2021年9月9日に「米国民1億人に対してワクチン接種を命令する」大統領令を発動している点だ。何よりも自由を重んじる国で、なぜ「強制」策をとったのだろうか。接種の対象となっているのは、連邦政府職員、軍人、政府関連業者に留まらず、従業員100人以上の民間企業社員にまで及ぶ。

この大統領令に対しては、共和党の知事26人が大統領令を無効とする知事令を出している。また各州で訴訟が起こされて、「連邦政府にはワクチン接種の義務化を命令する権限はない」という判決が相次いで出された。本件については日本貿易振興機構(JETRO)が詳しく報じている。

・「バイデン米大統領のワクチン接種義務化拡大にほとんどの共和党知事が反対」、  https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/09/ec142574fdeb9bf5.html
・「米連邦巡回控訴裁、従業員100人以上の民間企業に対するワクチン接種義務化を一次差し止め」、https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/11/1affdcbed21ee923.html

次に日本政府がとった施策に関する疑問点は以下のとおりである。

J1:疑問の第一は、世界でのワクチン争奪戦に参戦するかのように、日本政府がファイザーとモデルナのワクチン導入を早々と決めたのはなぜかという点だ。当時はまだ人類初の遺伝子ワクチンは治験段階だったにも拘わらずである。米国と同様に特例措置を講じてでも、一気呵成に国産ワクチンの開発を優先しなかったのはなぜだろうか。

以下は、産経新聞が2021年6月27日~29日に掲載した特集記事からの引用である。

①ファイザーやモデルナが実用化したのは遺伝子ワクチン(mRNAワクチン)であり、主成分の遺伝物質mRNAは人工合成が簡単で、短期間で大量生産が可能である。米国は通常5~10年かかる臨床試験と審査の過程を同時並行させることなどを容認して、前例のない驚異的なスピードでワクチン開発を推進した。

②日本では5月13日に「改正医薬品医療機器法」が成立したが、改正前には、海外当局が認めた医薬品を早期承認できる特例承認制度があった。日本はこの特例措置に基づき承認した。

③アメリカ政府は2020年5月に打ち出した開発計画「ワープ・スピード作戦」で、1兆円規模の予算を投じた。一方、日本では複数の補正予算を合計して、「ワクチン開発などに3千億円以上」を投じている。

J1の理由としては、日本政府には「感染症は有事、ワクチンは国防手段」という認識が希薄だったことが考えられる。あるいは、バイオテロや感染症を対象とした有事法制が存在しないために、通常のできる範囲の対処しか取れなかったのだという解釈も成り立つ。

J2:日本にはノーベル生理学・医学賞を受賞した、大村智教授が開発したイベルメクチンという治療薬があり、効果が判明していたにも拘わらず、なぜワクチン開発と同時並行で最短で認可しなかったのだろうか?

ワクチンであれ治療薬であれ、絶大な効果があり副反応がないという完璧な薬は存在しない。日本政府は緊急事態であるからこそ、海外で開発されたワクチンを特例措置で認可したのである。それと同時に国産の治療薬の認可をなぜ同時に進めなかったのか?本件については、何か政治的な判断が働いて、世界初の遺伝子ワクチンを優先し、効果と安全性が判明していた治療薬を後回しとした疑惑を否定できない。

J3:2020年当初はともかく、現在ではコロナウィルス感染の症状や毒性はインフルエンザ以下との評価が定着してきたにも拘わらず、なぜ政府は未だにウィルスの感染症分類を「2類相当」に据え置いているのだろうか。インフルエンザやはしかが「5類」で、交通の制限も、無症状感染者への適用も、入院勧告も、就業制限も不要で、医師への届け出も「7日以内」となっているのに対して、コロナウィルスは「2類相当」であるために、無症状感染者への適用、入院勧告、就業制限の対象となっているのだ。

シカゴ在住でアメリカの現状について講演活動や情報発信をしている山中泉が、『アメリカの崩壊』(方丈社)という本を出版している。著作の中で、山中はコロナに関する疑問点について以下の指摘を行っている。

A1:アメリカ国立衛生研究所(NIH、National Institute of Health)の下部機関に、国立アレルギー感染症研究所(NIAID、National Institute of Allergy and Infectious Diseases)がある。その所長を務めるのがファウチ博士である。武漢でコロナウィルス患者が発生する以前に、NIAIDから民間会社を経由して、武漢ウィルス研究所に「ウィルスの機能獲得実験」の目的で多額の研究資金が提供されていたことが明らかになっている。この点は2020年当初から、複数の有識者が指摘してきたことである。

A2:一部の「権威ある」医学雑誌、主流派が支配するNIHは、ファイザーなどの巨大製薬企業との極めて親密な連携が確認されている。ズバリ言えば、ワクチン開発にはNIAID、巨大製薬会社、医学界を巡る巨大な利権構造があり、そのトップに居るのがファウチ所長である。

山中泉は、「ワクチン3社(ファイザー、ビオンテック、モデルナ)のコロナ用ワクチンの税引き前利益は2021年度340億ドルに達した。世界の最も豊かな国の政府を相手に法外で巨額の利益を上げた」と指摘する。

ワクチンの価格について日本政府が支払った総額は不明だが、最初の調達分6億8400万回分で1兆6685億円であったという。(KYODO、2021.8.27)総額は2兆円を超えているのではないだろうか。

本件については、創薬研究者である「ノブ」氏が、自身のブログに以下のように書いている。ファイザーのアルバート・ブーラCEOがSNSへの投稿で「ワクチンの価格はTiered Pricing(段階的な価格設定)で決められていて、裕福な国は持ち帰り用の食事代程度の負担で購入し国民に無料で提供する。中所得国にはその半額程度、低所得国には原価で提供する、最も貧しい地域の多くは寄付によって接種を受ける。」と述べたことを紹介している。その上で、「これは世界中にあまねくワクチンを提供するために必要なことだと思う。」と付け加えている。

Tiered Pricingの考えは良しとしても、国産のワクチン開発他に投じた資金が3000億円であるのに対して、海外のワクチン取得に2兆円を投じた事実をどう評価するかだ。

山中泉は、さらに、次の点を指摘する。

A3:ワクチン接種義務化と、ワクチンパスポートを持たせる流れを作り「デジタル社会信用システム」を進め、その後全人類の完全なコントロールを目指す動きがある。世界の支配者層ともいえる世界経済フォーラムの主催者達とこれに参加する各国首脳と大企業の経営者は、今後の世界秩序を意図的にデジタル社会信用システム社会に移行させようとしている。

以上を総括すれば、世界レベルの疑問の内、W1とW2についてはA1とA2が、そしてW3についてはA3がその背景にあると思われる。

一方、日本政府に関わる疑問点については、暗黙のものも含めて、外部から相応の圧力が加わった可能性が考えられる。

たとえば、カーボン・ニュートラルで、菅前総理が国際社会に対して実現することが相当困難なコミットメントをしてきたように、それが正しいかどうかに拘わらず、その流れには逆らえない時代の潮流ともいうべき国際社会の動きがあることは事実なのだろう。

J2について山中泉は、「簡単な話だ。どんなにいい薬があって人類が救われるとしても、それでは儲からない人たちがいるからだ。」と指摘する。

それにしても、感染力は強いものの毒性は普通の風邪と変わらないウィルスに対して、人類初の遺伝子ワクチン(mRNAワクチン)のリスクが検証されていない段階で、2回、3回、さらには4回と、しかも子供達にまでワクチン接種を進めてきたことに対する疑問は払拭されていない。

J3については、早い段階から指摘されていたにも拘わらず、「5類」への見直しを先送りにしてきたことは事実である。現在に至るまで感染者数の推移ばかりが執拗に強調されてきたが、症状がインフルエンザと同等以下、もしくは通常の風邪と変わらないことがはっきりした時点で「2類相当」から「5類」へと定義を見直して、ワクチンから治療薬へと対策を転換すべきだったと考える。

山中泉が指摘するようにパンデミック発生からウィルス接種に至る一連の騒動の背景には、A3のシナリオの存在が垣間見える。2022年1月に開催された、ハーバード大、スタンフォード大、カリフォルニア大等の感染症や疫学等の12人の教授たちによるウェビナーにおいて、複数の研究者がA3を指摘していたという。

世界は常に大きな次世代のビジネスのテーマもしくは経済成長の物語を求めている。「世界経済フォーラム(ダボス会議)」が、その物語を世界に宣伝する場となっている。一方で、気候変動、脱炭素、パンデミックとワクチンなど、地球規模のテーマはどこまでが真実で、どこからが創作された物語なのか見分けるのが容易ではない。

一つ確実なことは、政府やダボス会議が主張する政策が常に正しいと考えるのは危険だということだ。何れにしても、我々は真偽を判別する情報リテラシーが求められる時代に生きていることは間違いない。

イノベーションを促進する思考法

進化、生物の戦略

 宇宙には「時間」という概念が存在する。「時間とは何か」というのは哲学的な問いだが、単純に言えば、「時間が存在する」ことは「万物は流転する」ことと同義であるだろう。

 およそ38億年前に生物が誕生して以来、地球環境は激変を繰り返してきた。それでも生物は過酷な環境の変化に適応するべく、進化する仕組みを発明してしたたかに生き延びてきた。生物の進化は世代交代のときにDNAを書き換える突然変異として起こる。それは、たとえその種は滅んでも新たな種として生き残るというしたたかな戦略なのである。

イノベーション、人間社会の宿命

 イノベーションとは社会の新陳代謝であり、陳腐化した制度やシステムに代わり、新しい制度やシステムが導入されてゆく変化である。

 社会が変化してゆく過程で、個々の技術や制度は役割を終えたものから退場してゆく。人もまた世代交代をしながら新しい世代が新しい社会を担ってゆく。この構図は生物の進化と同じである。生存することの宿命なのだ。

 近代社会は豊かさを追求しており、そのために経済成長を必要とする。成長するにはイノベーションが不可欠である。もしイノベーションを嫌って現状維持で行こうとする国は、国際社会の中で淘汰されてゆく。

 人間社会におけるイノベーションは生物界における進化に相当する。ただし両者が根本的に異なる点が一つある。それはイノベーションが人為的に起こされるということだ。社会においてイノベーションを起こす力は二つ存在する。一つは新しいテクノロジーの登場であり、他一つは政治の意思である。

 4月22-23日に、バイデン大統領の呼びかけによりオンラインで「気候変動に関する首脳会合(気候変動サミット)」が開催された。これは「かけがえのない地球を守るために」という崇高な理念を掲げているが、実態は政治の意思によって仕立てられたイノベーションを競うゲームであり、国益をかけた主導権争いに他ならない。

「何ができるか」vs「何をすべきか」

 ウィグル人に対する中国のジェノサイドに対し欧米を中心に非難と制裁の声が高まったときに、加藤官房長官は3月24日の記者会見で、「わが国の制度は人権問題のみを直接の理由として制裁を実施する規定はない。」と述べた。つまり官房長官は「規定がない」ことを理由に、「人権外交はやらない」と言ったのである。(https:kobosikosaho.com/daily/371/

 また4月16日に開催された日米首脳会談は、台湾有事における共同での対処に踏み込んだ。アメリカ側からすれば、これこそが首脳会談の目的であり成果だったのだろう。それを受けて日本では、台湾有事に「日本に何ができるか」の議論が展開してゆくことが予測される。

 実はこの二つの事例は、日本の思考過程が的外であることを物語っている。大事なことは「何をすべきか」であって、「何ができるか」ではないのだ。

 そもそも法律や制度は、過去に起きた社会的な重大事件を契機として、法体系の不備を補う形で制定されることが多い。未来に起こり得る事態に備えて、事前に新法を整備するという事例は稀だ。従って過去に例のない事態に対しては、現在の法体系や制度は常に不備なのである。この場合、政治の責任は「制度がないから対応できない」ではなくて、「新たな制度を大至急整備してでもやる」という姿勢でなければならない。

衰退途上国化する日本

 産経新聞の4月25日号に、寺崎明氏が『日本は衰退途上国になったのか』という記事を寄稿してイノベーションを論じている。「ワクチン接種の遅れ、国民一人当たりGDPの急落(2000年の世界第2位から2019年には第25位へ)」を事例として紹介した上で、「日本の最大の問題は戦略思考力の欠如にある。」と指摘している。

 まさにその通りだと思う。コロナウィルスに関して、このことを象徴する興味深い統計がある。グッドニューズは欧米と比較して日本の感染者数が桁外れに小さい事実であり、バッドニューズはワクチンの普及率が桁外れに低い事実である。

 感染者数が相対的に少ない背景には、複数の明確な要因があると思われる。問題はワクチンの方だ。そもそも未だに国産のワクチンが登場していないのは何故だろうか。日本は技術先進国ではなかったのか。新たなウィルスの出現に対し迅速にワクチンを提供できないとしたら、より感染力と致死性の高いウィルスが近い将来出現した場合(自然発生及びテロを含めて)、甚大な被害をもたらすことになる。

 ここでワクチン開発に関する日米の違いについて紹介しておきたい。日本経済新聞は昨年3月7日に、「アメリカでは2020年3月に新型コロナウィルスの対策費として83億ドルの追加予算案をトランプ大統領が承認し、ワクチンの開発加速などに30億ドル超を投じる。」と報じた。

 一方国産のワクチン開発の現状については、東洋経済オンラインが昨年4月25日に、「厚生労働省は2006年に『ワクチン産業ビジョン』を策定したが、製薬企業に丸投げしたとも言える内容だった。」と報じている。

 記事によると、厚労省の声掛けによって、大手製薬会社とベンチャーがペアを組んで3チームが作られたが、全てのチームが巧くゆかず最終的に瓦解してしまい、この結果ワクチンメーカーは中小ばかりに戻ってしまったという。

 さらに、昨年4月7日に閣議決定された2020年度補正予算案は「国内のワクチン開発への支援が100億円、海外のワクチン開発に差し出す資金が216億円」だったと報じている。

 アメリカ政府が投じた資金が3000億円超、これに対して日本政府が投じた資金が100億円、しかも200億円超を同時に海外に投じるという事実から何をくみ取るべきだろうか。また厚労省の『ワクチン産業ビジョン』が頓挫したのは何故なのか。

 一言で言えば、寺崎氏が指摘するように「日本には戦略がない」ということだろう。具体的には、「やるべきことを大胆にやらずに、できることを小出しに積み重ねてゆく」アプローチの失敗なのではないだろうか。

イノベーション思考

 イノベーションは「何をすべきか」という発想から生まれる。「何をすべきか」からの思考法をとると、それが難易度の高い課題であるほど簡単には実現できない障害がクローズアップされる。その結果、次の問いは「困難を可能に変えるために何が必要か」になる。正にイノベーションを起こす正のスパイラル思考だ。

 これに対して「何ができるか」からの思考法では、「法律がないから」、「予算がないから」、「世論が高まっていないから」、「日本には技術がないから」、・・・と、できない理由が山ほど登場する結果、小出しで中途半端な政策しか出てこないことになる。これは衰退に向かう負のスパイラル思考に他ならない。

 課題に直面したときに、政治家や官僚に限らず日本人の多くが「イノベーション思考」ではなく、「現状維持思考」に終始していないだろうか。できることを幾ら積み上げてもイノベーションにはならないことを肝に銘じる必要がある。

 制約条件を全て取り払って自由に考えることは、枠を作ってその中で考えることよりも格段に難しい。「何をすべきか」を考えることは、それは全体像を白紙にデッサンすることに似て、決して容易ではない。日本全体が難しい問いを避けて、安易な方向を選択していないだろうか。

イノベーション促進国への転換

 「衰退途上国」へのスパイラルから脱出し、ダイナミズムと成長を取り戻すためには、イノベーションが必要だ。しかもビジネスの世界に限らず、行政にこそ必要であることを強調しておきたい。

 「財政健全化」という誤った御旗のもとに、政府が「成長のための投資」という蛇口を絞ったために、日本はいつまでもデフレから脱却できず、その間に企業は世界の競争力を失い、日本は低成長に甘んじてきた。激変する環境の中で生物が進化を繰り返して生き延びてきたように、日本社会が再び成長軌道に戻るためにはイノベーション力を取り戻すことが必須条件である。

 戦後75年の間に進行したテクノロジーの変化は、驚嘆に値するものだ。一方その間に国家や社会の制度やシステムは、高速道路などのインフラと同じように、容赦なく老朽化が進んだ。大胆に刷新してイノベーションがどんどん起きる環境を整備しなければ、日本は衰退のステップを早めるだろう。

 コロナ対策として政府が投じた資金は2020年度に30-40兆円といわれる。残念ながらその資金は日本経済の沈み込みを止めるものが大半であってコロナ以前に対しGDPを増やすことは望めないだろう。何故ならこれは対症療法であって戦略投資ではないからだ。一方、ワクチンの集中的な技術開発や短期間での普及させる環境整備に十分な国家資金を投じるお金の使い方は、たとえば国が1兆円を投じることによって10年後に10兆円規模のGDP創出を推進するというように、戦略的というべきものだ。

 そのような戦略的なお金の使い方を阻害する障壁が、行政の世界には多く存在していると予測する。省庁縦割りはその代表的な例である。それらを撤廃してゆくことが行政のイノベーションである。

 では、イノベーション思考に転換するにはどうすればいいのか。日本が「衰退途上国」となった原因が「戦略思考の欠如」にあるとすれば、そこからどうやって脱出すればいいのだろうか。

 菅首相は昨年10月26日に行われた所信表明演説を、「・・・そのため、行政の縦割り、既得権益、そしてあしき前例主義を打破し、規制改革を全力で進めます。」と結んでいる。これを不言実行するのであれば、政府内の議論から「何ができるか」の議論を追放し、「何をすべきか」、「どうすればそれを実現できるか」をトップが常に問うよう運営を刷新すればいい。実行する意思さえあれば、即日でできることだ。