憂国(アメリカの現状)
退役軍人将官124名が2021年5月に公表した公開書簡は、「我々の国家は危機に瀕している」という憂国の書き出しから始まっている。(https://www.armstrongeconomics.com/wp-content/uploads/2021/05/2021)
書簡は直面する危機について次のように説明している。
≪2020大統領選挙はアメリカ建国以来最も重要な選挙だった。民主党が社会主義者とマルクス主義者を受け入れた結果、現在は1776年の建国以来アメリカが継承してきたConstitutional Republic(憲法に基づいて市民が政治家を選ぶ民主主義体制)の存続を賭けた戦いの中にある。それは、憲法が定める自由(始めからある自由Freedomと自ら獲得する自由Liberty)を支持する者と、社会主義やマルクス主義の支持者との戦いである。≫
アメリカ大統領選において国家ぐるみで憲法違反の不正が堂々と行われたことについては、既に多くの識者が指摘しているが、ここでは元駐ウクライナ大使の馬渕睦夫による著書(※)を参照して要点を整理しておこう。
2020大統領選でトランプが獲得した票は、CNNの公表値でバイデンが約8000万票、トランプが約7400万票だった。これが真実ならば、合計は約1.5億人となり、投票資格のあるアメリカ市民は約2億人であるから、投票率は約75%だったことになる。一方、過去の投票率は約60%であったので、投票率が従来と同等だったと仮定すると、投票総数は約1.2億人だったと予測される。反トランプの大手メディアの公表値で、トランプが7400万票獲得したのであれば、バイデンが獲得したのは4600万票となり、実際は8000万対4000万位でトランプが圧勝していたと推定される。大手メディアは郵便投票の結果投票率が上昇したというが、それだけの規模で得票数が改ざんされた疑いが濃厚である。
2020米大統領選は、アメリカの未来を決める「自由主義対社会主義」、「ナショナリズム対グローバリズム」の決戦であり、同時に世界の運命を決める戦いだった。トランプは選挙期間中に「この選挙はアメリカンドリームを選ぶか、社会主義がアメリカを滅ぼすかを決めることになる。」と警告していた。警告のとおり、2020年11月にアメリカで全体主義革命が事実上成就したというに値する結果となった。2020年大統領選はそれほどの歴史的重大事件だったのだ。
2020大統領選挙の糾弾
選挙は完全性(Integrity)が保証されなければならない。公開書簡は次のように述べている。
≪選挙の完全性は、州法に基づく必要な管理のもとに有権者の本人確認をし、一人一票が保証されることによって成り立つものだが、今日では多くの人がそのような管理に対しレイシスト(人種差別)というレッテルを貼り、公正で正直な選挙を妨害している。選挙の完全性を保証するために法の支配を再確立しなければならない。FBIや最高裁は選挙不正に対して速やかに断固とした措置を取り、2020年の大統領選のように無視してはならない。≫
補足すると、アメリカには不法移民が多数生活しているが、市民権・選挙権を持っていることを厳格に確認しようとすれば、それを不法移民が多い民族に対する差別だと非難する集団がいるという訳だ。
米国では4年毎の大統領選の中間に中間選挙がある。次回は2022年11月に行われ、下院議員全員と上院議員の1/3が改選される。民主党は大規模な選挙不正を行ってトランプの再選を阻止したものの、バイデン政権の2年間の成果をもとに、次の中間選挙で国民の審判を受けることになる。アメリカには今でもバイデン政権を正統な政権だと認めていない共和党支持者が多くいる。共和党、民主党の何れが下院と上院を制するか、2024年の大統領選の前哨戦として2022年の中間選挙が死活的に重要な戦いとなる。
2020大統領選での民主党によるクーデターを踏まえて、共和党は本人確認の厳格化を目的とした選挙法の改正を州議会で進めている。共和党が多数を占める17州では既に共和党案による選挙法改正が成立していて、他の州でも議論が進んでいる。一方の民主党は郵便投票を拡大する、連邦政府としての選挙法改正を進めてきたが、民主党が提出した選挙制度改革法案は、幸いなことに2021年11月に上院で共和党に阻止され成立しなかった。そもそも郵便投票には本人確認がいい加減になるという根本的な欠点があり、この法案が成立すると、民主党政権が永続してしまう懸念があったが、ひとまずその危機は回避された模様である。
バイデン執政に対する注文
バイデン政権が進めてきたさまざまな政策に対しても、公開書簡は問題提起している。以下に代表的なものを紹介する。
≪バイデン政権は、トランプ政権が行った有効な政策や規則を撤回するために、大統領行政命令を50本も連発して議会承認を経ずに無効にした。これは専制的な手段で我々の憲法の権利を本格的に攻撃するものだ。≫
≪情報の自由な流通はアメリカの安全保障のために重要だ。政府の役人やマスコミ等が言論や表現を検閲したり、捻じ曲げたり、虚偽の情報を拡散することは閉鎖された社会における専制的な手法である。≫
≪法の支配こそが民主主義社会の基本である。幾つかの都市では犯罪が黙認されており無法化が進んでいる。これを放置してはならない。≫
補足すると、情報操作については、大統領選において主要なメディアが露骨で執拗なトランプ叩きを演じた。ツイッターやフェイスブックはトランプのアカウントを永久停止するという暴挙にでた。公開書簡はその事実を踏まえたものである。
1月6日に起きた連邦議会議事堂乱入事件は、極左の過激派であるANTIFA(反ファシスト)が起こしたことが明らかになっている。またBLM(ブラック・ライブズ・マター)は、キリスト教精神に基づく家族制度を破壊し、警察と刑務所を廃止し、トランスジェンダー社会を称賛し、資本主義社会を廃止することを行動指針としていて、社会の無法化を進める勢力となっている。
大統領の資質
公開書簡はさらに、大統領の資質について疑問を投げかけている。
≪軍の最高司令官の精神的・肉体的なコンディションは無視できない。彼は生命をかけて国家の安全保障について間違いのない意思決定を速やかに遂行できなければならない。昨今の民主党指導者からの核のコードに関する問い合わせは、核武装している敵国に対して一体誰が責任者なのかという問題を提起し、危険な安全保障上のシグナルを送ることになる。軍は疑念のない指揮命令系統を保持していなければならない。≫
個人名こそ出していないが、軍の最高司令官も民主党の指導者もバイデン大統領を指しており、これはバイデン大統領に対する不適格宣告に等しい。精神的にも肉体的にもバイデン大統領は最高司令官が務まる状態にないと見ており、従って核ボタンを渡すことができないという悲鳴でもある。これはアメリカの軍の統制の最上部に脆弱性があることを世界に知らしめるものであり、それでも公開書簡で書かざるを得ないという悲痛な叫びである。
総括
最後に、公開書簡は次のように総括している。
≪現在の民主党議会、現政権によって、アメリカは社会主義とマルキストによる専制政府に大きく左旋回してしまった。我々の国家、受動的及び能動的な自由、歴史的な価値が存続の危機に瀕している。我々は全てに国民に対し、地域、州、国家のそれぞれのレベルで、アメリカと我々の憲法に基づく民主主義体制を救う行動をとる政治家を選出するよう、政治に関与してもらうことを切に希望する。≫
これは、2022年中間選挙に向けて、「良識ある市民よ立ち上がれ」と鼓舞する檄文である。2022中間選挙に向けて、アメリカ共和党支持者、民社党支持者の双方から相当な市民行動が起こるだろう。暴力的な行動も過激さを増し、最悪の場合極右と極左が激突する可能性もあるだろう。アメリカは正に南北戦争以来の分断状態に向かっている。
もう一つ重大な点がある。それはバイデン・ハリス政権の残りの任期における執務能力と資質に関する問題である。テレビで放映されるバイデン大統領の言動を見聞しているだけで、肉体的な老化と認知症が進行していることは痛々しいほどだ。
馬渕睦夫によれば、菅元総理が訪米した今年5月の時にも、トップ会談はハリス副大統領が代行し、バイデンとの会談にはブリンケン国務長官、イエレン財務長官、サリバン安全保障担当大統領補佐官が同席し、大統領の代行として菅総理と意見交換したという。
2022年の中間選挙に致命的な影響を与えないためには、バイデンはできるだけ早い時期に大統領ポストを退くことが余儀なくされるだろう。その場合規定により、カマラ・ハリス大統領が誕生することになるのだが、古森義久は12月5日の産経新聞で、ハリス副大統領自身もまた相当に品格と資質に問題がある人物であると報じている。それによれば、最近では民主党系の大手メディアでさえもハリス氏の言動や品格を疑問視する報道を始めたという。バイデン政権びいきのCNNテレビが11月にハリス氏の1年間の軌跡を取り上げて「機能障害」だと断じており、さらに副大統領としての職務能力を有していないというホワイトハウス内部の声を紹介したという。
トランプ再選を何が何でも阻止するために、民主党とディープステート、大手メディアが連携して大規模な憲法違反の選挙不正を行い、バイデン大統領、ハリス副大統領の政権を誕生させたのだが、その二人ともが大統領としての資質・能力に重大な問題ありという現実なのだ。コロナ狂騒曲、米中対立で明け暮れた2021年が間もなく終わろうとしているが、11月に中間選挙を控えているアメリカは、年初から暗雲漂う2022年に突入してゆく。
ディープステートに関しては、馬渕睦夫の著書(※)を参照願いたい。
※参照文献:「2022年世界の真実」、馬渕睦夫、WAC