宇宙は138億年前に誕生した。宇宙には銀河系に相当する星の集団が1兆以上あり、銀河系には太陽に相当する恒星が1000億以上あるという。
太陽は銀河系の端に位置し、約45億年前に誕生した。太陽系には8つの惑星があるが、大地と海と大気がある惑星は地球だけである。
その地球に生命が誕生したのは約38億年前であり、激変する地球環境に翻弄されながら、生物は絶滅と進化を繰り返した。
約700万年前に人類の祖先が出現し、約20万年前に現代人の祖先であるサピエンスが登場した。約7万年前にサピエンスの中の集団はアフリカを出て、世界中に拡散し、やがて現代の各民族の祖先集団が生まれた。そしてサピエンスは3~4万年前に日本列島にやってきた。
サピエンスは、火山活動などの天変地異、氷河期を含む気候変動、さまざまな自然災害や飢饉という困難を乗り越えて、1000世代以上に及ぶ世代交代を重ねて歴史を刻み、やがて現代社会を築いた。
このように、宇宙誕生からサピエンスに至る歴史を大きく俯瞰してみると、その一つ一つが悠久の時間に展開された荘厳な「奇跡の物語」なのだという事実に思い至る。
「奇跡の物語」はもう一つある。それはサピエンスが、宇宙や地球を舞台として起きた「奇跡の物語」を解明する能力を獲得したことである。どんなに立派なドラマであっても、それを理解する観客がいなければ、物語の存在も、時間の流れさえもないに等しいからだ。
そういう理解に立つとき、現代を生きる我々は皆、「奇跡の物語」のバトンを受け継いだ現役の担い手なのだという重要な事実に思い至る。人生は長くても百年であるから、それは宇宙史138億年における、ほんの一瞬の主役ということである。